NO19  「自分への気づき」

 試合の前などに「自分に勝て!」という決まり文句がよく使われます。では、負けた方の自分はどうなるのか、というジョークを聞いたことがあります。また、「自分を見失うな」と言われることもよくあります。見失うのも、見失われるのも同じ自分です。見失う自分は見失われた自分とは別の自分なのでしょうか。

 あまり考えると頭が混乱しそうですが、人は誰でも自分を客観的に眺める自分と眺められる自分とに分けて考えることができる能力を備えています。「私」が「私」のことを知ったり考えたりすることができるのは、人に心というものがあるからです。人類以外には、人類に最も近いチンパージーでも心は持っていません。

 さて、人には心があるのですから、それを自分のために使わない手はありません。いや、使わないと自分を見失ってしまうのです。忙しすぎたり、多くの問題を同時に抱えたりして、その処理に追われていると、自分自身の心が今どうなっているのかを冷静に見つめることができなくなります。身体なら全力疾走を続けて限界が来ると足は自然に止まってくれますが、心の方は気づかないままに無理を重ねてしまうものなのです。だから日頃から意識して自分の心の状態を見守り続けることが大切になってきます。

 私がカウンセリングを学んで良かったと思っていることの一つは、自分の心身の状態を意識する癖ができたということです。忙しかったり、思い悩んだりしている時にそうなっている自分を離れた立場から見ることができるようになりました。そして、このままではもっと落ち込んでゆきそうだという予想が立つようになりました。その時にはリラックスできることをします。

 一枚の木の葉っぱをじっと眺めたり、小さな野の花に語りかけたりすると、自分のことにふっと目が向くようになります。そしたら頑張り過ぎたり他人のことばかりに気を遣い過ぎたりしている自分にそれを知らせてあげます。



 ※物事の根本原理を考える学問が哲学ですが、考える「私」と考えられる「私」の問題は心理学に属します。昔は哲学と心理学は分かれていませんでした。

心のベンチ

あるスクールカウンセラーが生徒・家族・職員に送ったメッセージ集です、悩みのある方、辛い方、カウンセラーの皆さんにも参考にして頂けたら幸いです

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