NO40 「体の傷・心の傷」

 これまで膝を擦りむいたり切り傷で絆創膏を張ったりしたことのない人はいないでしょう。同じように、人は誰でも人間関係の中で心にも傷を受けながら生きているものです。

 体の傷は消毒や体に備わった修復力でよくなります。心の傷も心に備わった回復力や他者の温かい関与でよくなります。そして体も心も受傷とその回復を繰り返すことで免疫力が高まり強くなって行きます。

 回復力はどこから来るのでしょうか?まず体の回復力を考えてみましょう。皮膚が傷で出血すると、血を固めるために血小板が傷口に集まり、バイ菌をやっつけるために白血球が増産され、痛みが何時までも続かないように脳の指令で神経伝達物質が放出されます。これらは生命維持のために、全て体が自律的に反応して行うものです。

 心の回復力とは何でしょうか。それは心に信頼感が根付いていることです。

 まず、自分自身に対する信頼感です。今自分が感じている楽しいこと、面白いこと、興味をひかれること、やってみたいこと等を絶対的に正しいものと信じることが自分への信頼感です。それに時間やエネルギーを使うことで自信が持てるようになり自分の良さに気づき自分への信頼感が高まります。

 つぎに、他者への信頼感です。これは赤ちゃんの頃から子ども、児童、生徒と成長してきた過程で接してきた人にどれだけ信頼されていたかという経験で決まります。「お母さんて、いいな」「お父さんて、いいな」「おばあちゃんて、いいな」「友達って、いいな」「クラスって、いいな」などなど、「人っていいな、世の中っていいな」という経験からできるのが他者への信頼感です。

 社会生活をするようになってからの他者への信頼感は、メンバー同士の中でできたり壊れたりします。一度でも信頼感の持てる仲間集団を経験した人は、安心感を持つことができてその後の対人関係をスムーズに送ることができるようになります。

 中学生の頃までは、似た者同士でグループが形成されますが、高校生の年代になると自分とは違った人や知らない人への興味が湧いてくるものです。グループ内だけに関心を閉じるのではなく、周りにも目を向けて日頃接する集団の中に信頼感が形作られて行くといいですね。将来、もし心が傷つくようなことがあっても、きっとその経験が回復力として生きてくると思います

心のベンチ

あるスクールカウンセラーが生徒・家族・職員に送ったメッセージ集です、悩みのある方、辛い方、カウンセラーの皆さんにも参考にして頂けたら幸いです

0コメント

  • 1000 / 1000